マスケラード
SD妄想吐き出しブログ。
【リョ+赤】マーシャラー
顔を出せない元主将と顔を出してほしい現主将の話。
すっかり日も暮れてしまった。
今までであれば、この時間帯はバスケをして汗を流していただろう。今ではそれもなくなった。
消し屑をごみ箱に捨て、筆記用具を片付ける。汗をかかずに家に帰るため、着替えを用意する必要もなく、当然、荷物は減った。したがって、肩にかかる負担は軽くなったはずだが、何故か以前よりも体が重くなったような気がする。そのせいか、歩くときに自然と背中が丸くなり、
「元気がないが、大丈夫か」
と声をかけられることが多くなった。
別に元気がないわけではない。
ただちょっと、そう、ほんのちょっぴりバスケがしたいだけなのだ。
おそらく、体がだるく感じるのもそれが関係しているんだろうと分かっている。だが、それを認めてしまったら、足が勝手に体育館に向かってしまいそうで怖いのだ。だから赤木は気付かないふりを続けている。
「ほんと、お兄ちゃんってば意地っ張りね」
と、最近ではついに晴子にまで呆れられてしまった。しかし、やはり引退した身で部活に顔を出すというのは、どうにも未練がましく思えてしまい、躊躇ってしまう。
「だって、本当に未練があるんだから仕方ないだろ。別にいいじゃないか、顔を出すぐらい。そんなことでストレスを溜めてたら、余計に勉強の効率が悪くなると思うけどな」
同じく引退した身である木暮にこう言われたことがあった。全くもってその通りである。
しかし、一度決めたからには今さら部活に行くというのも気が引ける。詰まるところ、馬鹿げているかもしれないが、何かに負けたような気分になるのだ。
その何かというのは、バスケがしたいという欲求であったり、引退したから部活には行かないと決めた自分自身であったり、送り出してくれた後輩たちであったりと、色々である。
この負けず嫌いは生来のものなので、今さらどうこうなるものではないということは赤木も重々承知している。そのため、妹に呆れられようが親友に正論を言われようが、自分は部活に顔を出さないだろうと心のどこかで確信していた。
昇降口に着くと、かすかに懐かしい音が耳に入ってきた。バスケットボールが弾む音や、皆が体育館を駆け回る音だ。他にも部活動は行われているはずなのに、赤木の耳が拾うのはそれらの音だけだった。
むずむずする体を抑え、必死に先ほどまで解いていた問題を思い浮かべた。それでも、なかなかバスケの音は頭から離れていかない。
赤木は、逃げるように小走りで校門に向かった。
「なーに急いでるんすか」
突然、後ろから声をかけられた。
慌てて振り返ると、そこには先日赤木が主将の座を譲った後輩が立っていた。
「ドモ」
「…ドモじゃないだろう。お前、部活はどうした」
「ダンナに話があったんで、ちっとばかし抜け出してきました。三井サンに任せてあるんで大丈夫だと思いますよ」
目の上のたんこぶも、こういう時に役に立つんすねと言って後輩はにやにやと笑った。きっと三井が聞いていたら、また喧嘩になるところだっただろう。
「…まぁいいだろう。それで、俺に話があるっていうのは何だ。部活のことか?」
主将の仕事について何か悩みがあるのかもしれないと思ったのだが、予想に反して後輩は首を横に振った。
「あんたさ、勉強に身が入ってないんだって?」
まさか勉強嫌いな後輩からそんな話題が出てくるとは思っておらず、思わず赤木は言葉に詰まった。
「妹さんも木暮さんも言ってたよ、バスケがしたくてソワソワしてるって。だったら顔を出しに来りゃあいーじゃないすか」
俺、別にダンナのことは目の上のたんこぶだなんて思ってねーすよと言いながら、後輩は頭をポリポリと掻いた。
そんなことを気にしていたわけではないが、三井はこの後輩と上手くやっているのだろうかと少し不安になった。この様子だと、本当に邪魔だと思われてるのではないか?
「別にそういうことを気にしていたわけじゃあないが、きちんとケジメを付けた以上は顔を出すわけにはいかんだろう」
「ダンナは真面目すぎるよ」
「お前は不真面目すぎる。…ちゃんと授業には出ているんだろうな?」
そう言ってジロリと見やると、「ま。ま。俺のことはいーんすよ」と慌てて話を反らした。この様子を見ると、今年も追試は免れないようだ。思わずため息が漏れる。
「ダンナには勉強頑張ってもらわねーと俺が困るんす」
後輩の口から意外な言葉が出てきたため、赤木は目を丸くした。
「ほう、何故だ?」
「だってダンナがバスケ強い大学に受かんなかったら、また一緒のチームでプレイできないじゃないすか」
その答えに赤木は驚いた。
確かに反抗こそされなかったものの、入部したときから一貫して生意気な態度だったため、この後輩がここまで自分を慕ってくれているとは思わなかったのだ。
また、気になることがもう一つあった。
「まぁ、強いに越したことはないが…別にバスケが強い大学でなくても一緒にプレイはできるだろう」
すると、後輩は入部した日と同じような不敵な笑みを浮かべ、こう答えた。
「大学の人らが神奈川NO.1ガードを放っておくとでも思ってんすか?」
大学の関係者はきっと、この宮城リョータという男の名前を知らない。
もしかしたら山王戦を見て興味を持ってくれた人はいるかもしれないが、これから成果を上げなければ忘れ去られてしまうだろう。だいたい、まだ神奈川NO.1ガードになってすらいない。
それなのに、この後輩はもう推薦を勝ち取った気でいるのだ。全く呆れたものである。
「だから、たまには部活に顔出しに来なよ。可愛い後輩のためだと思ってさ」
そう言って笑う生意気な後輩の頭を「調子に乗るな」と言いながら、軽く小突いた。
「…まったく。主将がこんなんじゃあ、もう少し根性を入れ直す必要があるな」
赤木がそう呟くと、後輩はええっと悲鳴を上げた。
「顔出すだけでいーんですって!優しく見守ってくれてりゃそれでいーっすから!」
「ふん、様子を見に行くからには口も出させてもらうぞ。お前の主将としての仕事ぶりも見てやるからな。覚悟しておけ」
あー余計なこと言わなきゃ良かったと項垂れる後輩を見て、思わず赤木はくっくと喉を鳴らして笑った。
その声を聞いて項垂れていた後輩はチラリと赤木の方を見たが、少し間を置いてからプッと吹き出し、ケラケラと笑った。
二人の笑い声は様々な部活動の音に掻き消され、放課後の学校に響くことは無かった。
****************************************************
パスは得意なリョーちん。
リョ赤の日は遅刻してるし結局リョ+赤になっちゃったけど、せっかく書いたので上げておきます。
リョーちんの話し方が分からなすぎて誰おま状態でオワタ。
ちなみに、題名の「マーシャラー」は航空機誘導員のことです。
すっかり日も暮れてしまった。
今までであれば、この時間帯はバスケをして汗を流していただろう。今ではそれもなくなった。
消し屑をごみ箱に捨て、筆記用具を片付ける。汗をかかずに家に帰るため、着替えを用意する必要もなく、当然、荷物は減った。したがって、肩にかかる負担は軽くなったはずだが、何故か以前よりも体が重くなったような気がする。そのせいか、歩くときに自然と背中が丸くなり、
「元気がないが、大丈夫か」
と声をかけられることが多くなった。
別に元気がないわけではない。
ただちょっと、そう、ほんのちょっぴりバスケがしたいだけなのだ。
おそらく、体がだるく感じるのもそれが関係しているんだろうと分かっている。だが、それを認めてしまったら、足が勝手に体育館に向かってしまいそうで怖いのだ。だから赤木は気付かないふりを続けている。
「ほんと、お兄ちゃんってば意地っ張りね」
と、最近ではついに晴子にまで呆れられてしまった。しかし、やはり引退した身で部活に顔を出すというのは、どうにも未練がましく思えてしまい、躊躇ってしまう。
「だって、本当に未練があるんだから仕方ないだろ。別にいいじゃないか、顔を出すぐらい。そんなことでストレスを溜めてたら、余計に勉強の効率が悪くなると思うけどな」
同じく引退した身である木暮にこう言われたことがあった。全くもってその通りである。
しかし、一度決めたからには今さら部活に行くというのも気が引ける。詰まるところ、馬鹿げているかもしれないが、何かに負けたような気分になるのだ。
その何かというのは、バスケがしたいという欲求であったり、引退したから部活には行かないと決めた自分自身であったり、送り出してくれた後輩たちであったりと、色々である。
この負けず嫌いは生来のものなので、今さらどうこうなるものではないということは赤木も重々承知している。そのため、妹に呆れられようが親友に正論を言われようが、自分は部活に顔を出さないだろうと心のどこかで確信していた。
昇降口に着くと、かすかに懐かしい音が耳に入ってきた。バスケットボールが弾む音や、皆が体育館を駆け回る音だ。他にも部活動は行われているはずなのに、赤木の耳が拾うのはそれらの音だけだった。
むずむずする体を抑え、必死に先ほどまで解いていた問題を思い浮かべた。それでも、なかなかバスケの音は頭から離れていかない。
赤木は、逃げるように小走りで校門に向かった。
「なーに急いでるんすか」
突然、後ろから声をかけられた。
慌てて振り返ると、そこには先日赤木が主将の座を譲った後輩が立っていた。
「ドモ」
「…ドモじゃないだろう。お前、部活はどうした」
「ダンナに話があったんで、ちっとばかし抜け出してきました。三井サンに任せてあるんで大丈夫だと思いますよ」
目の上のたんこぶも、こういう時に役に立つんすねと言って後輩はにやにやと笑った。きっと三井が聞いていたら、また喧嘩になるところだっただろう。
「…まぁいいだろう。それで、俺に話があるっていうのは何だ。部活のことか?」
主将の仕事について何か悩みがあるのかもしれないと思ったのだが、予想に反して後輩は首を横に振った。
「あんたさ、勉強に身が入ってないんだって?」
まさか勉強嫌いな後輩からそんな話題が出てくるとは思っておらず、思わず赤木は言葉に詰まった。
「妹さんも木暮さんも言ってたよ、バスケがしたくてソワソワしてるって。だったら顔を出しに来りゃあいーじゃないすか」
俺、別にダンナのことは目の上のたんこぶだなんて思ってねーすよと言いながら、後輩は頭をポリポリと掻いた。
そんなことを気にしていたわけではないが、三井はこの後輩と上手くやっているのだろうかと少し不安になった。この様子だと、本当に邪魔だと思われてるのではないか?
「別にそういうことを気にしていたわけじゃあないが、きちんとケジメを付けた以上は顔を出すわけにはいかんだろう」
「ダンナは真面目すぎるよ」
「お前は不真面目すぎる。…ちゃんと授業には出ているんだろうな?」
そう言ってジロリと見やると、「ま。ま。俺のことはいーんすよ」と慌てて話を反らした。この様子を見ると、今年も追試は免れないようだ。思わずため息が漏れる。
「ダンナには勉強頑張ってもらわねーと俺が困るんす」
後輩の口から意外な言葉が出てきたため、赤木は目を丸くした。
「ほう、何故だ?」
「だってダンナがバスケ強い大学に受かんなかったら、また一緒のチームでプレイできないじゃないすか」
その答えに赤木は驚いた。
確かに反抗こそされなかったものの、入部したときから一貫して生意気な態度だったため、この後輩がここまで自分を慕ってくれているとは思わなかったのだ。
また、気になることがもう一つあった。
「まぁ、強いに越したことはないが…別にバスケが強い大学でなくても一緒にプレイはできるだろう」
すると、後輩は入部した日と同じような不敵な笑みを浮かべ、こう答えた。
「大学の人らが神奈川NO.1ガードを放っておくとでも思ってんすか?」
大学の関係者はきっと、この宮城リョータという男の名前を知らない。
もしかしたら山王戦を見て興味を持ってくれた人はいるかもしれないが、これから成果を上げなければ忘れ去られてしまうだろう。だいたい、まだ神奈川NO.1ガードになってすらいない。
それなのに、この後輩はもう推薦を勝ち取った気でいるのだ。全く呆れたものである。
「だから、たまには部活に顔出しに来なよ。可愛い後輩のためだと思ってさ」
そう言って笑う生意気な後輩の頭を「調子に乗るな」と言いながら、軽く小突いた。
「…まったく。主将がこんなんじゃあ、もう少し根性を入れ直す必要があるな」
赤木がそう呟くと、後輩はええっと悲鳴を上げた。
「顔出すだけでいーんですって!優しく見守ってくれてりゃそれでいーっすから!」
「ふん、様子を見に行くからには口も出させてもらうぞ。お前の主将としての仕事ぶりも見てやるからな。覚悟しておけ」
あー余計なこと言わなきゃ良かったと項垂れる後輩を見て、思わず赤木はくっくと喉を鳴らして笑った。
その声を聞いて項垂れていた後輩はチラリと赤木の方を見たが、少し間を置いてからプッと吹き出し、ケラケラと笑った。
二人の笑い声は様々な部活動の音に掻き消され、放課後の学校に響くことは無かった。
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パスは得意なリョーちん。
リョ赤の日は遅刻してるし結局リョ+赤になっちゃったけど、せっかく書いたので上げておきます。
リョーちんの話し方が分からなすぎて誰おま状態でオワタ。
ちなみに、題名の「マーシャラー」は航空機誘導員のことです。
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きりん
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自己紹介:
主に福田と仙道に狂ってます。

