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【藤←長】向日葵

二年生の夏頃の話。

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「おぉ、ついに並んだなぁ」

帰り道で藤真が突然そんなことを言い出した。

何の事か分からずに長谷川が首を捻ると、藤真はイタズラっぽい笑みを浮かべながら長谷川の後ろを指差した。つられてそちらを見る。
すると、前を通りすぎようとした家の玄関先に、ひょろりと伸びた茎が何本も立っていた。

「向日葵か」
「あぁ。ここん家の玄関先に去年も咲いてたよな」

言われてみれば、そうだったかもしれない。
入学してから毎日この道を通っているのだから、視界には入っているはずだ。しかし、だからといって気に止めたことも特に無かったため、長谷川の記憶はあやふやだった。

「やっぱりヒマワリは成長すんの早いな。この間俺に並んだばっかりだったのに」

少し悔しそうに言う藤真を見て、自然に口元が緩む。コートの中では頼れる存在であるのに、普段はこういう少し子供っぽい面を見せる。そういう気取ってない性格であるせいか、藤真を慕う者は多い。

「お前だってまだ伸びるさ」
「そうだといいんだけどなぁ。あー今すぐ成長痛来ればいいのに…」

そう言いながら再び歩み始めた藤真を見て、長谷川もそれに従った。



「あいつに勝ちたいんだ」

ポツリと藤真が呟いた。
先ほどまでとはうって変わって、真剣な眼差しだった。“あいつ”というのは、言うまでもない。きっとあの老け顔な男のことだ。

「まぁ背が伸びたからって勝てるわけじゃないけどな」

と付け足しながらふっと自嘲気味に笑う横顔を見て、何か声を掛けようと思うが、言葉が出てこない。こういう時に自分の口下手さを呪いたくなる。
そんな長谷川を知ってか知らずか、気分を変えるように背伸びをしながら「確かさ」と明るい調子で藤真が口を開く。

「ヒマワリってさ、太陽の方を向くんだよな。だから花言葉が“私はあなただけを見つめている”なんだって前に聞いて、なるほどなーって思ったよ」

そう言うと、藤真は長谷川の方を向いてニカッと歯を見せて笑った。

「俺も水飲んで栄養取って太陽の方向いてればヒマワリみたいになれっかな?」

冗談めかしてそう言う藤真を見て、一瞬言葉に詰まる。
藤真は大して意識せずに言ったんだろう。多分、意味なんて特に無い。
だが、ほんの一瞬、考えてしまった。「その太陽とは一体誰なんだ」と。


「…今のままでも十分向日葵に似てるぞ、お前は」
「そうか?そのわりには背伸びないぞ」
「大丈夫さ」


まるで自分に言い聞かせるように、長谷川は言葉を噛み締めながら呟いた。

まだ、向日葵の成長は止まっていない。だから太陽の方を向いている、ただそれだけだ。

きっと、動きは止まっていない。





****************************************************
向日葵は成長が止まると、一定方向のまま動かなくなるらしいですね。
それにしても太陽にしちゃあ黒すぎる。


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プロフィール

HN:
きりん
性別:
女性
自己紹介:
主に福田と仙道に狂ってます。

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